うつ病を治すために必要な逆説的観点


うつ病を治すために必要な逆説的観点こんにちは!
ホリスティック精神科医の浜野ゆりです。

「心の時代」などといわれるようになって、
はや20年あまり。

日本の自殺人数は2011年ごろまで毎年
3万人を超え、特に先進諸国では
目立って高いことが懸念されてきました。

さらに2011年には、厚生労働省は、
地域医療の基本方針となる医療計画に
盛り込むべき疾病として指定してきた
がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に、

新たに精神疾患を加えて「5大疾病」
とする方針を決めました。

それだけ、精神的健康へのサポート体制の
必要性が切実になってきているのです。

そして、精神的不調の
最も代表的症状がうつ状態です。

すなわち気分の落ち込み、それに伴う
不安や焦燥感、意欲低下・思考力低下、不眠、
それに倦怠感をはじめとする
さまざまな身体症状も含みます。

そして、うつ症状の背景には
必ずと言って良いほどの大きな割合で、
心理的な要因があります。

悲観的な物事の考え方、自分や他者、
世界に対する価値観が今のあなたの気分を決め、
それがうつが発症するかどうかを決めます。

ここで、うつ気分を感じ始めた時に
ほとんどの人がやってしまう、
間違った対処法があります。

それは「なぜ、今自分はこんな気持ちなのか?」
を分析し、その原因を突き止めて排除し、
うつ気分を治そうとすることです。

「え、その対処法のどこが間違っているの?」
と思われるかもしれません。
実際この対処法は、身の回りの多くの
実務的な問題解決には基本中の基本となる方法ですよね。

例えば製品開発でどこか上手くいかなければ
製造システム上の問題個所を見つけて改良する。

特定の科目の成績が上がらなければ、
自分の理解が不足している箇所を見つけて、
勉強法を改善・強化する・・・。

また、生き物としての人間の進化の
歴史から見ても、こうした取り組み方は本来、
とても目的にみあった合理的なものでした。

ご先祖様(人間っぽい姿をするはるか以前
からを含めて)にとって「危険」といえば、
例えば肉食動物に襲われるとか、岩が落ちてきて
足を折るとか、食べ物にありつけず飢えて死ぬ、などです。

そういう際には、対処法は、肉食獣の例でいうなら
「一刻も早く外敵に気づく→心身をめいっぱい
緊張させて相手と戦う、または全速力で逃げる」

ですね。

そして肉食獣から逃げおおせたら
リラックスして、安心して過ごせます。

この間、数秒から数時間、
長く追われるなどあってもせいぜい一晩程度。

(そこで逃げおおせなかったら捕食されて終わり
なので、長く悩むという選択肢自体が存在しません。

ですから脳は危機を察知した時には、
アドレナリンをはじめとする緊急対処ホルモンを
体内に怒涛のように分泌して血圧を上げ、
空腹感も忘れさせ、筋肉を緊張させ、

痛みも疲労も感じにくくさせて、たとえ
ちょっとやそっと怪我をしても(食べられて
しまうよりはマシなので)戦うなり逃げるなりを
するような体制に、身体の状態をもっていきます。

いわゆる「火事場のばか力」を発揮して、
命を長らえようとします。

そのおかげで確かに今日まで、
人類は生き延びて来れたのです。

しかし20世紀、更には21世紀になり、
ストレスの内容が過去とは大きく変わってきました。

少なくともいわゆる先進国においては、
すぐに命に関わる身体的危機は大幅に減った代わりに、
心理的なストレスが大部分になっています。

この心理的ストレスの特徴は、継続時間が長いことです。

例えば受験一つを取っても年単位。
また対人関係ストレスは、数日や数週間以内で
終わることの方が珍しく、
多くは数か月から年単位でしょう。

また仕事をはじめとする社会活動も、
単純労働のみでなく頭脳を持続的に
使う必要のあるものが増えています。

更には、目に見える形では
仕事や対人交流が一日の一部でも、実際には

「今日、あの人にこんなことをいわれた。
あれは私のあの発言に気を悪くしたからに違いない」
「来年度、契約継続できなかったらどうしよう。
このままでは家のローン支払いが・・・」

などと、実際には一日の大部分、
心の中がストレスに占拠されています。

そして、脳は相変わらず従来のやり方で
対処しようとしますから、このような
長引くストレスに対しても

「原因究明モード→アドレナリン分泌」をしてしまい、
本来劇薬であるアドレナリンなど
非常時ホルモンを何か月も何年間も
体内にめぐらせ続けてしまいます。

当然、効果よりも副作用の方が強まってしまい、
不眠や胃潰瘍、高血圧、糖尿病悪化、
その他の不調をきたしてしまいます。

それに、思い出していただきたいのですが、
「なぜ今私は落ち込んでいるのか?」
について過去を思い出して分析しても

「これが原因だ!だからこうすれば良い」
というクリアカットな理由と対処法など、
出てきたことがあるでしょうか?

考えたところで更にいろいろな嫌な
思い出が噴出し、対処法はまとまらない。

そして気分は「なぜ」を考え始める前よりも
もっと悪化していることの方が多いはずです。

つまりこの分野の問題解決法は、
昔の肉食獣対策や、現代の、例えば受験対策
(過去問を解いておけば今年の入試も受かる)
といったものとは、全く違った対処法が必要なのです。

それは「そのことについて考えない」ということ。

考えないことは、逃げではありません。
考えてしまうことが、より自分の
うつ状態を悪化させる「望ましくない行為」なので、

それを意識的に「止める」ことこそが
「合理的対処行動」であり、
そのためには毎日の練習が必要です。

ちょうど、何となく不安や不満がある人が
空腹でもないのにスナック菓子を
過食してしまうようなものです。

うつや不安が生じた時、その原因を分析して
排除したい、というのは生き物としての
人間に備わる本能的な、切実な感覚です。

しかしそれは上記のように、
現代では無効なだけでなく有害なので、
この「誘惑」へは理性をもって、
はっきりと拒否をしなくてはなりません。

このような新たな心の習慣を
身につけるのはもちろん、
容易なことではありません。

それは過食を止めたり、断酒や禁煙を
するのと同じように、それなりエネルギーと
決意を要するプロジェクトです。

しかしそれらと同じように、いったん身に
つければ、生涯の宝となる能力なのです。

ただし実は、「考えるのを止める」「考えない」
というのは、結構難しい課題です。

人間は毎日何万ものさまざまなことを、
ほとんど間を置かずに考え続けており、
もはや考えていることも自覚できていない人が多いです。

よく患者さんが「落ちこんだ」「不安になった」
という場合に「その時、何を考えていましたか?」
と問うと「いや、特に何も考えてませんでしが・・・」

といわれることが多いですが、
実際には、その当時(例えば、1週間前)のことを、
手帳やカレンダーなども使って細かく
思い出してもらうと

「ああ、あの日はテレビニュースで
○○のことを言っていて、それで以前、自分も
○○に行ったことがあるなあと思って・・・
そうしたら・・・」と、嫌な対人関係のことを
思い出すきっかけだったことに気づく、

といったことは、よく診療で経験します。
逆に、数分間以上本当に何も考えずに
過ごせるようになっているとしたらその人は、
かなり心の性質やその制御法について既に知っている人といえます。

そのくらい、自然には身につきづらい技術なのです。
でも決して高度で特殊な技術でもなく、
ひとたび「身につけよう」と決心すれば、
誰でも身につけられるものです。

ちょうど自転車の乗り方を学ぶようなものです。
一度も意識的に練習したことがなければ「自然に」は乗れませんが、
意識して何度か取り組めば、誰でも普通に乗れるようになります。

「考えない」練習も、これに似ています。
では、考えない練習とは、
どのようにすれば良いのでしょうか?

答えは、瞑想です。
しかし別に、禅寺にこもる必要もないですし、
座禅の特殊な座り方をする必要もありません。

普通に日常生活を送りながら、具体的には
例えば電車の中でも、レジの順番待ちをしながらでも、
会議に参加しながらでも、会社や学校に向かって
歩きながらでも、食事中にもできる方法です。

具体的なやり方の解説をしたお勧めの本を2冊、ご紹介します。

(1)『なまけ者の3分間瞑想法』
   デイヴィッド・ハープ著、創元社

全くの初心者が、身構えることなく、
日常生活の中に瞑想を取り入れるための
さまざまな手法を解説しています。

(2)『うつのためのマインドフルネス実践』
   マーク・ウィリアムス、ジョン・カバットジン他著、星和書店

うつ(うつ病・うつ状態)について
より詳しく知りたい人には、こちらもお勧めです。

前述したような「昔のストレス対処法」と
「現代のストレス対処法」の違い、
瞑想法のより細やかな方法の解説等がされており、

著書の中にある「ボディースキャン」
「マインドフルネスヨガ」などの、著者らによる
誘導(暗示)音声が収録されたCDつきです。

このマインドフルネス瞑想法によって
著者らはアメリカの大学病院にて
数千例以上の患者の症状を改善、
再発予防に成功しています。


浜野ゆり

浜野ゆり の紹介

ホリスティック精神科医。通常の精神医学や心理学の他、心身を癒す分子整合(オーソモレキュラー)医学にもとづく栄養療法や、催眠療法・瞑想・レイキ・アロマさらには占いも習得。これらをフル活用してみなさまの統合的健康と幸せ感獲得のお手伝いをします。
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