トラウマを克服する新たな治療法、EMDR


トラウマを克服する新たな治療法、EMDRこんにちは!
ホリスティック精神科医の浜野ゆりです。

「あの時、あの人がこういったのが、
今でもトラウマになっていて・・・」

日常会話の中で、最近よく耳にするフレーズです。

それほど、トラウマ(外傷。ここでは「こころの傷」の意味)
という用語がよく使われるようになってきました。

誰でも数十年生きていれば、
いやなこと、つらいこと・・・
さまざまな試練を経験します。

しかし精神医学/心理学的定義では、本来、「トラウマ」とは
「命に関わる体験をしたり、
それを間近で目撃した場合に限って
『トラウマ』と定義する」

とされています。

ただ、日常的で一見「小さい」事象でも、

・毎日繰り返される
・本人が抵抗したり逃げ出したりできない環境に置かれている
・助けがない

といった条件が重なった場合には、
トラウマ体験として本人の心の奥深くまで
傷つけてしまいます。

最近はこうしたタイプの心的外傷を
「複雑性PTSD」と呼ぶことを提案している、
この道の第一人者の学者(※)もいます。

確かに、カウンセリングや精神科の外来で
出会う方の中には、信じられないくらい
劣悪な家庭環境で育てられた人もおり

「よくぞ今まで生き抜いてこられましたね!」
といいたくなる方もおられます。

まさにトラウマのサバイバー(生き抜いた者)なのです。

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とはいえ、あまりにも過酷な半生を過ごしてきたので、

他者や自分への信頼感は得難くなっています。

また、ネガティブな予想や価値観、たとえば

「どうせあの人は自分を攻撃する」
「自分は誰にも愛されない、価値のない人間」

をベースに持っていると、
そうしたフィルターを通じて世の中を見てしまうため、
それが人生だと感じてしまいます。

さらに、そうしたフィルターを持っている限り、
それに見合ったネガティブな
人々や体験を引き寄せてしまうのです。

すると「ほら、やっぱり人生なんてろくなもんじゃない」
という「証明」を受けた気持ちになり、
ますますつらいスパイラルにはまりこんでしまいます。

この負のスパイラルから脱出するには、
どこかで「フィルター」を書き換える必要があり、

そのためには一度、フィルターの
原因になっているトラウマ体験に向き合い、
それをより「怖くない」ものにしていく
必要があるのですが、

それはものすごく不安を掻き立てることですから、
一人では到底取り組めません。

そこでトラウマの専門家による、
丁寧な心理カウンセリングが
必要になってくるわけです。

従来のトラウマ治療は
「トラウマの一つ一つに何度も直面し、
それに耐え、慣れていくこと」
とされてきました。

確かにこれは必要で有効な方法ですが、
そもそもトラウマはつらすぎて
避けてきたものなので、

向き合うことは大きな苦痛を伴いますし、
治療途中では、過去の体験が甦ってくるので
治療前よりも精神状態が
一時的ながら悪化することも十分ありえます。

なのでなかなか根本的な治療が
難しい領域なのですが、
実は数十年前から、別のアプローチが
発見されていました。

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それはEMDRと呼ばれるものです。

一言でいうと両目を左右に数十回素早く動かしながら、
専門のセラピストにしかるべきフォローを
受けていると、トラウマが解消する
というものです。

しかもこの手法の優れたところは、
トラウマ体験に深く詳しく入り込む必要はなく、
眼を動かしながら何となく思い出していれば良い、
という点です。

なので治療による患者への心的負担が、
従来型の治療よりも大幅に軽減されます。

WHO(世界保健機関)も去年、EMDRを、
「患者の負担が最も少ないトラウマ治療の方法」
として推奨しました。

そしてEMDRで心の傷(トラウマ)を治療することに
ついての最近の知見や患者の例が、
去年(2013年)12月11日の「クローズアップ現代」でも放映されました。

この中で、

・患者さんがつらさのあまり
(無意識的に)トラウマ体験のかなりの部分を抑圧(健忘)
している例も多いこと

・EMDRを成人前に施行しておくことで
その後の本人の心の健康度が上がり、
社会適応や対人関係も良好になり、
結果として将来の医療費削減にもつながること

・こうした理由から、現在アメリカでは
公費も使って積極的に子供たちに
EMDRを行なうことが増えていること

がレポートされていました。

日本ではまだ知名度が低いEMDRであり、
(他のほとんどの心理療法同様に)
健康保険は使えませんが、

数少ないEMDRセラピストと
ご縁のできた人は非常に幸運といえます。

日本EMDR学会 の中に地域別治療者リスト
がありますので、まだまだ数は少ないですが、
必要な方は連絡を取ってみられるのも良いでしょう。

よく、

「過去をほじくり返してどうする?
大事なのは今と、未来に意識を向けて、
それをポジティブに生きることだ」

などという人がいますが、

現在の自分の考え方、感じ方は
過去の体験の結果できあがっているので、

過去を一度「棚おろし」して
そこへの見方を変えない限り、
今を安心して生きることも、将来を
ポジティブに生きていくこともできません。

確かに過去のできごとそのものは
変えられませんが、その意味づけを
よりポジティブなものに変えることで、

その体験をした自分の評価も上がり、
その結果現在や未来をより積極的に
生きることができるようになるのです。

もしあなたがトラウマのサバイバーなら、
ぜひあらゆる手法を試みて、
人生の楽しみ、幸せ感を味わっていけるように
行動してみてくださいね。

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(※)『心的外傷と回復』J.L.ハーマン、みずず書房


浜野ゆり

浜野ゆり の紹介

ホリスティック精神科医。通常の精神医学や心理学の他、心身を癒す分子整合(オーソモレキュラー)医学にもとづく栄養療法や、催眠療法・瞑想・レイキ・アロマさらには占いも習得。これらをフル活用してみなさまの統合的健康と幸せ感獲得のお手伝いをします。
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