統合失調症での「幻聴」「妄想」にも存在意義がある


統合失調症での「幻聴」「妄想」にも存在意義があるこんにちは!
ホリスティック精神科医の浜野ゆりです。

一般に統合失調症の代表的な症状である
「幻聴」や「妄想」、特に被害妄想は、

患者本人にとって非常に苦痛で、

また家族をはじめ周囲の人にとっては 不可解で、
患者を不穏にしてしまう
非常に嫌な症状です。

しかしこうした一見了解困難な症状の
根元にある心理に注目することで、
少しでも患者さん本人の心の理解をし、

それによって治療を進めようとする
精神科医が、ごくごく少数派ながら
以前からおられます。

統合失調症はその性質上、やはり
かなり病状が深刻なことが多く、
心理面からのアプローチは

時間も労力も膨大にかかる
大変なプロセスなのですが、
上手くいくと病状が改善ないし 安定化
するだけでなく、

患者本人にとっても
自己評価が上がり

生きる意欲が出てきます。

また家族など周囲の人にとっても

「本人は、こんなことを感じ、
体験したから、ああいう反応を
せざるを得なかったのか。

だから今後はこういうアプローチを すれば、
支えていきやすいのだな」

とわかるので、症状に振り回されがちな
本人を「奇怪で理解不能」ではなく

「シビアな世界で精一杯生きている」
と見られるようになり、
周囲の人たちの心にとっても

間接的に楽にになる考え方といえます。

さて、患者さんの、
いわゆる
精神病世界に対しては、
以下の
ように見るのがポイントです。

幻覚(幻聴が代表的)や妄想は、
本人の不安や悲しみ、コンプレックス
などを象徴的(シンボリック)に
表現したものである。

例えば、

未婚であることを 気にしている人には
「あの人、もう40歳超えたのに 独身で、
今後どうするつもりかしら」

という複数人数のヒソヒソ声が 聞こえたり、
太めなのを気にしている人なら
何か口にするたびに

「あ~、また食べてる。
いいかげん、ダイエットすれば いいのに。
性懲りもなくあんなに
食べて・・・」

などと聞こえてくることが よくあります。

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また、「自宅から一歩でも出たら
スパイ組織に攻撃されるので 出歩けない」
とおびえている人は、

「人と上手く関係性を作れない 自分への劣等感」
や「他人への不信感」
が象徴的に
「スパイ組織」という妄想や、

そこから自分を迫害しようとする
幻聴を生み出しています。

健常者でも、夢の中の体験が
これに類似しています。

日頃から気がかりに感じていることが
夢に出てくるのはよくありますが、
覚醒後振り返れば、現実には
そこまで極端なことは起こり得ない、

もしくは荒唐無稽過ぎて
かえって
現実味がない、 という
ストーリーが多いものです。

しかし夢を見ている最中には
これ以上ないほどリアルで、
せっぱ詰まって感じられます。

統合失調症における幻聴や妄想 体験も、
このように極端なのですが、

夢を見ている最中に本人が
「夢だ」と認識するのが困難である のと同様、
幻聴や妄想を症状と 認識するのは、
統合失調症者にとっては
かなり困難なものです。

また、これは本人にはさらに
受け入れがたい点ですが、

「どんなに恐ろしい体験でも
誰にも存在を認められないよりはマシ」
という側面もあります。

典型的なのは、例えば
「どこにいても○○の組織の人たちが
自分を監視し、つけている。
家にいても盗聴器がしかけられている」

というものがありますが、
薬をのんで急激に幻聴や妄想が
ゼロになった場合、かえって本人が
落ちこんでしまうことがあります。

これは「精神病後うつ」といわれ、
時には自殺したくなるほど深刻な

状態になりえます。

では「嫌な体験が消えたのに、
なぜ落ちこむのか?」ですが、

確かに嫌で、怖い体験ながらも、
監視や追跡をされるということは
自分が何かの意味で特別で 注目に値する、
という前提があります。

ところが幻聴や妄想が解除され
現実に戻ってみると、自分は名もない、
他の誰とも区別されない一市民に過ぎない
という現実に直面することになります。

これが、自己評価の低下を
自覚することに
なり、時には
死にたくなるほどの
苦痛になるのです。

ただし、上記のような心の動きは
あくまでも無意識(潜在意識)レベルで
起きていることであり

顕在意識(本人が自分で把握している 意識)
レベルでは本気でこの
幻聴や妄想内容を
信じているし
 、そこから
逃れたいと切望しています。

ですから、上記のような解釈を
本人に伝えて直面化させようとしても 無理だし、
かえって有害なので
すべきではありません。

精神科医、原田誠一氏の
『正体不明の声――対処するための
10のエッセンス』(アルタ出版)

の中では、患者が自分の幻聴に気づき、
合理的な対処をするために、
幻聴について以下の基本知識を
持つよう助言しています。

1)幻聴のルーツは 「自分の気持ちや考え」である

幻聴につながりやすい気持ちや 考えトップ3

①後悔すること、自分を責める考え

②自分が意識したくない感情
例:人の成功を見聞したとき、
  称賛と同時に感じる妬ましさや反発心

③他人の考えや言動の想像
例:「あの人は私をこう思っている のでは?」など

いずれも、誰にも普通に生じる 心の動きです。

2)幻聴が聞こえてきても 受け流し、
相手にしないこと

相手にしない方が幻聴が静まりやすく、
逆に反論したり、聞き耳を立てると 悪化します。

3)幻聴は不安・孤立・過労・不眠 時に
生まれるので、これらの条件を
避けるように
生活に気をつける

「健常者」でも遭難時や無菌室などで
長く孤立させられた状況では、
いかに容易に幻聴が出てくるかを 説明しています。

4)幻聴が聞こえてきてしまったら
やり過ごすための手段をいくつか
普段から準備しておく

例えば

・食事や、好きな飲み物を摂る
・ガムをかむ
・仮眠をとる
・家事やガーデニングをする
・家族や友人と雑談する
・好きな音楽をかける

などです。

栄養療法的には、

・ゆで卵、チーズ、ナッツなど
 高タンパクで血糖値を急に上げにくい
 食物を少量摂る

・散歩やジョギングなど身体を動かす

もお勧めです。

なお、聞こえてきた声が実際のものか
幻聴かを区別する方法として

話している相手を視認でき、
その人が
面と向かって自分に語りかけてくる場合

自分以外の人(家族、友人、
精神科スタッフなど)もその声が聞こえる
と明言する場合

のみに、「声」を相手にする という方針を
提案しておられますが、
これが――特に①が、
非常に困難なのは
日頃の診療でいつも痛感します。

というのも、私も患者さん
(ここではAさんとしましょう)に、
例えば

「実際にその人(隣席のBさん)が、
Aさんに
『Aさん、(同僚の)Cさんをお茶に
誘って
断られたんだってね』と
言ったんですか?面と向かって?」

と何度も確認しても、
「ええ、そうです!」と いう答えが
返ってくることが多いのです。

で、詳細に聞くと状況が非常に微妙で、
例えばBさんが隣の席からAさんに
面と向かって話しかける状況では
「Aさんは…」ではなく 「あなたは…」

という代名詞で話しかけるのも自然であり、
その上、目線を合わせて話しかけてきた、
といわれれば、その状況をそれ以上
検証するのが難しくなります。

話の内容や流れからみると
明らかに幻聴であり妄想と考えざるを
得ないのですが、それを指摘しても
受容できないでしょうから、

やはり原田氏もいうように
「『声』が言ってきたことを議論せず、
自分の気持ちの安定のために、
『声』をやり過ごすこと」

の助言をするしかありません
(特に自費カウンセリングでなく、
診療時間が数分しか取れない
保険診療においては)。

記事中に紹介した
「正体不明の声」
ブックレットは、
現在入手困難 なよう
ですが、
氏が書いた別の本はアマゾンでも 購入可能です。

『統合失調症の治療』


この本は一応、治療家向けのものですが、

付録として、幻覚妄想を疑似体験できる
「バーチャルハルシネーションCD‐ROM版」

と解説パンフレットが収録されており
参考になると思います。

また、以下の過去記事もご参考に。

「幻聴」――ある日の体験から

次は、実際に心理カウンセリングで
統合失調症を克服した人による動画で、
とても励まされます。

早く、このような患者さんが
増えていく世の中になると良いですね。

・Eleanor Longden「私の頭の中の声」


浜野ゆり

浜野ゆり の紹介

ホリスティック精神科医。通常の精神医学や心理学の他、心身を癒す分子整合(オーソモレキュラー)医学にもとづく栄養療法や、催眠療法・瞑想・レイキ・アロマさらには占いも習得。これらをフル活用してみなさまの統合的健康と幸せ感獲得のお手伝いをします。
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