「幻聴」――ある日の体験から


「幻聴」――ある日の体験からこんにちは!
ホリスティック精神科医の浜野ゆりです。

一般に精神疾患、なかでも統合失調症は、
よくわからない、異質な世界に
入ってしまった人たちの話だと
思われがちです。

しかし統合失調症の罹病率は1%弱
いわれており、

例えば首都圏の満員電車1車両あたり
1名くらいは統合失調症の人が
乗っている計算になるのです。

そのくらい、この病は一般的です。

また、人の心にはさまざまな側面があり、
日常的な落ち込みの先に
病としてのうつ病があるのと同様、

ちょっとした気の遣い過ぎ、憶測、
自責感がどんどん進んでいった先に
被害妄想や幻聴が出現するものであり、

そのもとになる心理的傾向は
人間だれしも、正常な心の反応の中に
含まれています。

 

例えばある男性は朝食後、急いで
歯磨きをしていたところ、練り歯磨きの
白い泡が口からあふれて、
ズボンの下腹部に落ちてしまいました。

急いでぬぐいましたが、
乾いてからも何だか白いシミが
残っている気がします。

出勤時間にぎりぎりなので彼は仕方なく
そのまま家を飛び出しましたが、
場所が場所なので

「精液を漏らしたと勘違いされたら
どうしよう?」

と心配でした。

いつものホームに並び、満員電車に乗りましたが、
並んでいても、乗ってからも
何だか周りの人たち――

特に女性たちが
チラリと彼の下腹部を見たり、2人連れが
互いに目配せしたり、

座席を移るなど彼から微妙に距離を
置いたりするように思えます。

d826644dce48eb0a7093f0caafbec372_s

友人らしき2人の女性は彼をチラッと
見てから、クスクス笑いながら

「朝から信じられないよね~」
「何か、におわない?」

と、嫌そうにいうのがかろうじて
聞こえてきます。

彼は「やっぱり勘違いされてしまった。
違うのに・・・」と、ショックを
受けます。

とても恥ずかしく感じ、身の置き所が
ない数十分間を過ごしました。

その後1-2時間ほどは落ち込みましたし、

何日かはやや過剰なほどに
歯磨き時に服を汚さないように
していましたが、そのうちその
体験のショックも薄れ、

またもとのように「ふつう」な気分で
毎日を送れるようになり、特に
電車に乗るのも苦痛にはなりませんでした。

あの日の女性たちの言動も

「自分のことだったかもしれないが、
たまたま他の話をしていたのを、
自分に関係づけて思い込んで
しまっただけかも。

忙しいなか、皆が僕のことを
いつまでも覚えていやしないだろうし」

という、合理的な検討の余地が出ています。
それが、彼が冷静さを早く取り戻す
一つの根拠になっています。

彼はこのように、自分の主観だけでなく
客観的視点も入れて自分の体験を
振り返ることができたので、
病的な症状には進みませんでした。

しかしこれが、

「彼女たちは絶対に自分を笑っていた!」

確信してしまうと、
その場面に留まらず
「会社でも」「近所でも」「自宅にいても」
常に周りに見られる、うわさされる、

更に最近なら「インターネットで
自分のことが拡散されている」
という風に感じてしまい、

安らかな気持ちでいられる場所が
なくなってしまいます。

これが持続すると、統合失調症と
判断せざるを得ない状態になります。

で、統合失調症の患者さんたちが
自分の妄想を 妄想ではなく現実だと
確信する、本人が「証拠」と
感じるのが、「幻聴」の存在です。

前述の例でいうと、電車の中で女性たちが
話し合っていた会話内容のように
その時点で本人が最も気にしていることが
音声として聞こえてきてしまうものです。

(ただし、今回の例の彼は統合失調症では
ないので、医学診断的には幻聴ではなく、

いわゆる「聞き違い」レベルなのですが。)

幻聴とというのは非常に微妙なもので、
例えば誰もいない所ではっきりと
人声が聞こえてくればわかりやすいですが、

身近で、実際には別の話題をしているのに
自分のことを「明らかに」話しているように
感じてしまうことも多いのです。

その際、患者さんは

「自分しか知らないことを
話していた。だからこれは自分の
思い違いではなく、現実に起きている
ことなんだ」

という風に考えます。

しかし実際には、幻聴とは
本人の心の中で考えていることが
音声化して頭の中に響く現象なので

「本人しか知らないこと」が
聞こえてくるのは、当たり前なのです。

さて前置きが長くなりましたが、
このように、何か気になることがあると
周りの人たちがそれを感知して
うわさしている、

と感じてしまうのは
人間なら誰にでもある基本的な
心理反応です。

そしていったん幻聴が出てくると、
その内容は本人が最も気にしている、
人に知られたくない、あるいは怖い
内容のことがほとんどのため、

幻聴が出るようになると
日常生活を冷静に送るのが
極めて困難になってしまいます。

この大変さを理解してもらうため、
去年、大阪西区社会福祉協議会主催で
「幻聴体験講座」が主催されました。
(2013年11月6日朝日新聞)

講座では講師の説明中、背後で不気味な
つぶやき声や「ふふふ…」などの笑い声
が聞こえてきました。

聴講者たちは動揺し「ラジオか何かの
声がうるさい、止めてほしい」と
伝えたところ、

これは参加者に
幻聴を体験してもらうため、
録音しておいた音声が隠しスピーカーから
流れるようにしていたとのことです。

わずか1時間の講義だったのに、
その間、講師の声以外に「幻聴」も
混じり合って聞こえてしまい、

講義の内容に集中できず、取材した
記者は「頭をかきむしりたくなる」
と述べていました。

そのくらい、きつい体験です。


で、先日私も、偶然「幻聴体験」を

することになり、上の記事を
思い出したのでした。

その日はあるセミナーに参加していました。

開場はレンタルの会議室で、
そのビルのフロア各階には複数の
大小の会議室が入っています。

大人数の部屋が多いため、
開場側で本格的なスピーカーやアンプを
設置しており、部屋の隅々まで
声が届くようになっていました。

セミナー

ところがその日に限って、講師の話が
聞こえにくくなり、代わって
隣の部屋の講師の声が入るように
なってしまいました。

電波の混線です。

こちらの講師も一生懸命話しているのですが
それ以上のボリュームで隣室講師の声が
入ってしまい、

しかもちょうど話の内容の
キーワードも類似していたので

聴いていると ついそちらに
引っ張られてしまいます。

すぐに会場スタッフが飛んできて
調整し、間もなく直りましたが、
わずか10分程度でも結構
思考散漫になってしまいました。

統合失調症の方はこうした世界に
住んでいます。

もし身近にそうした方々と接する
機会があったら、
「自分とは異なる、異質な人たち」
と思うのではなく、

非常な不安と考えにくさの中で
格闘しながら生きていることを
少しでも想像していただけましたら
幸いです。


浜野ゆり

浜野ゆり の紹介

ホリスティック精神科医。通常の精神医学や心理学の他、心身を癒す分子整合(オーソモレキュラー)医学にもとづく栄養療法や、催眠療法・瞑想・レイキ・アロマさらには占いも習得。これらをフル活用してみなさまの統合的健康と幸せ感獲得のお手伝いをします。
カテゴリー: 統合失調症   タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

  • 2017年12月
    « 9月    
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31